リターンマッチ(後藤正治)

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先日読み終わったこちらの本。

ボクシングノンフィクション「遠いリング」の著者でもある後藤正治氏のものだ。
ボクシングものをあれこれ読みたくなる流れで購入。

とはいえ、こちらは、ボクシングそのものが題材ではない感じだ。
「遠いリング」が、ボクシングそのものに青春をかける若いボクサーを
追いかけたのに対して、この「リターンマッチ」は、人生を踏み外しかけた
定時制高校の若者たちと彼らに全力でぶつかっていく先生の物語で、
ボクシングはあくまでその媒介ツールにすぎない。

反骨精神あり余る個性あふれる主人公の脇浜先生。自分も貧困から苦学して
神戸市外国語大学の二部を卒業し、教師に。生まれが厳しい環境だと
どうしてもそうなるのだろうし、教師という職業は左がかった思想に
なりがちなのか、バリバリの組合員としても活躍してきた人らしい。
もっとも、某日●組のような自分の都合のために文句を言う連中とは違う。
あくまで生徒のために教育委員会ともぶつかってきた様子が描かれている。
すべて、西宮西高校の定時制(現・西宮香風高校)での実話だ。

「昔は、貧乏育ちで出来が悪い子でも、喧嘩は強くで勢いがあった。
 いまはそんな貧乏育ちで出来が悪い子が、喧嘩も弱く無気力になっている。
 体力と強さが最後のプライドのはずなのに、それもなくなったら
 どうするのか」

移り変わる時代の中で生徒の質が変わっていくのを見て、脇浜先生は
自分が若い頃やっていたボクシングをもとに、ボクシング部をつくって
そこに問題児を導いて、鍛えていく。授業以外は土日昼夜問わず生徒と
向き合っていく。

もちろん、すべての生徒がそれによって良い風に変わっていくわけではない。
突然練習に来なくなったり、無気力さを増して学校を去って行ったり。
「自分は全力でぶつかっているのに」と、裏切られるような気持ちを何度も
感じさせながらも、それでも同じように進んでいく脇浜先生の様子に
読んでいて感心させられる。

政治思想的な部分は私自身とは異なるが、こんな先生がいてくれたら、
すくわれる子供たちはずいぶんたくさんいるんじゃないかと思った。

「今の新任の若い教師に、どんな教育をしていきたいかと聞いたら、
 『子供の個性を自由に伸ばす』とか
 言いよるんよ。ようそんな言葉ぬけぬけ使いよるわ、ってね。」

ありがちな、言葉のうわっつらだけを語る姿勢を痛烈に批判していた。
そういう言葉だけで、落ちこぼれている生徒に実際に何をどう向き合えるのかという
イライラした思いなのだろう。

後藤氏の文章は、沢木耕太郎氏や百田尚樹さんのように、読んでいて
続きが気になるような引き込む系の文章ではない。どちらかというと、事実を
丁寧に言葉を選んで、地味にじっくりゆっくり積み重ねていくような文章で、たまに
退屈さを感じるときもあるし、読むのに時間がかかる。けれど読み終わった後で
じわじわ「旨み」を感じさせる。そんな文章だ。

また先で他の著作も読んでみたい。

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